〇 税制上の扶養と健康保険の扶養は何が違う
年収によって「扶養に入る」とか「扶養から外れる」とか言われますが、税制上の扶養と健康保険の扶養では、仕組みが異なります。そこで、その違いについて解説します。
扶養とは、自分の稼ぎで生計を立てられない家族や親族に対して、経済的な支援をすることです。
扶養される人は、自分の収入では生活するのが難しいので、税金や健康保険料の負担を軽減する措置が取られています。扶養される人は、税制上では「扶養親族」あるいは「扶養家族」、健康保険では「被扶養者」と言われています。
税制上の扶養は、所得税や住民税にかかわる控除の制度で、所得税法上の控除対象扶養親族がいる納税者は、所得から扶養控除の38万円が差し引かれます。扶養控除は、納税者が「扶養控除等の(異動)申告」を提出、あるいは確定申告することで受けることができます。
健康保険の扶養は、会社員などの被扶養者が保険料を負担せずに、健康保険に加入できる制度のことです。健康保険の扶養に入る要件の1つは、被扶養者の見込み年収額が原則130万円未満であることです。この年収には給与の他、非課税の通勤手当なども含まれます。
税制上の扶養親族になるのは、納税者と生計を一にしている配偶者以外の親族で、年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の場合です。
配偶者は、税制上の扶養親族には該当しません。扶養されている人が配偶者の場合、生計同一で給与収入が103万円以下だと「配偶者控除」、103万円超201万5,999円以下だと「配偶者特別控除」が適用されます。
また、19~22歳の学生の子どもがアルバイト等で年収103万円以下の場合は、「特定扶養控除」として、親の所得から63万円が控除されます。
次に、健康保険の被扶養者は、被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人のことで、同居の必要はありません。また、被保険者と同一世帯で、主として被保険者の収入により生計を維持されている親族が対象です。こちらは同居が必要です。
なお、税法上の配偶者が婚姻関係にある人に限定されるのに対し、健康保険の配偶者は、事実上婚姻関係の人も含まれます。
健康保険の被扶養者の要件は、年間収入が130万円未満(60歳以上は、年間収入180万円未満)であることです。この年間収入は、年間の見込み収入額です。また、この収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金なども含まれます。
なお、従業員51人以上の会社で、パートとして週20時間以上働いていて、契約上の月額賃金が88,000円(年換算1,056,000円)以上になると、健康保険に加入することになり、扶養から外れます。月収88,000円は、残業代や賞与、手当などを含まない契約上の所定内賃金です。
「扶養に入る」か「扶養から外れる」かの判断は、家計に大きな影響を与えます。税制上の扶養と健康保険の扶養の違いをよく理解して、適切な判断をしてください。
(塚)
<ご参考>
*年途中で退職した場合の扶養
・税法上の扶養の場合、収入がすでに103万円を超えていると、年途中で退職して現在無職であっても、その年の扶養に入れません。
・健康保険の扶養の場合、退職した家族が退職時に収入が130万円を超えていても、その後向こう1年間の収入見込みが扶養限度額内であれば被扶養者とすることができます。
・年間収入(1~12月)で判断する所得税法の取扱いと異なるので、注意してください。
・なお、分かりやすくするために、内容を簡略化しています。詳しくお知りになりたい方は、税務署、協会けんぽ、健康保険組合等にご確認ください。