〇 スポットワークを受け入れる事業主の注意点

最近、アプリ等から申し込んで、短時間あるいは単発で働く「スポットワーク」(「スポットバイト」とも言う)が急増しています。事業主側からすれば、人手不足の解消につながりますが、労働時間管理が難しいなど問題点があり、どういう点を注意すべきか見ていきましょう。

スポットワークの定義を考えた場合、①履歴書や面接なしで、応募から労働契約締結までアプリ等で完結され、②労働条件通知書電子的に通知されるものとします。ここでは雇用関係のない業務委託は含めず、狭義のスポットワークである雇用関係があるアルバイトを対象とします。

スポットワークの仕組みとしては、まず事業主がデジタルプラットフォーマーであるスポットワーク仲介事業者へ求人掲載を依頼します。スポットワーカーは求人情報を見て応募しますが、その段階で雇用関係は成立します。スポットワーク仲介事業者は事業主に代わって、労働条件通知書を電子データでスポットワーカーに発行することになります。(下図ご参照)

(出所:厚生労働省ホームページ「スポットワークの労務管理」より)

労働契約は事業主とスポットワーカーの間で締結することになり、労働基準法等を守る義務は事業主に生じます。

一旦確定した労働日や労働時間等の変更は、労働条件の変更に該当するため、事業主とスポットワーカー双方の合意が必要になります。

スポットワーカーは希望すれば、正社員の道も開かれています。また、希望すれば賃金の即日払いも可能です。その場合は、スポットワーク仲介事業者が事業主に代わって賃金を立て替えることになります。

スポットワークの労務管理上の注意点は、次のようになります。

二つ以上の事業所で就労する場合、労働時間は通算されるため、総労働時間が1日8時間、1週間40時間を超えると割増賃金を払う必要があります。ただし、スポットワーカーから申告がない限り労働時間の通算はできないので、労働時間の把握は難しい問題になります。

事業主の指示により指定の制服への着替えなど、業務に必要な準備行為や業務終了後の掃除等の行為などは労働時間に当たるので、その時間は労働時間として取り扱ってください。

事業主の都合で1日休業あるいは仕事の早上がりをさせる場合は、使用者の責に帰すべき事由による休業になるので、スポットワーカーに休業手当を支払う必要があります。

労働災害については、たとえ1時間であっても雇用されているので、労働者災害補償保険法が適用されます。労働保険の年度更新の際には、スポットワーカーの賃金を含めて計算するようにしてください。

その他にも、スポットワーカーの労働災害防止のため、労働安全衛生法に基づいて、雇入れ時に機械等の危険性や安全装置の取扱方法の教育を実施してください。パワハラなどのハラスメント防止のために、相談窓口や行為者に対する措置内容などの周知も行ってください。

事業主は簡単に労働力を確保できるので、スポットワークのニーズは高いと思いますが、労務管理は正社員と同様に行う必要があります。また、履歴書や面接なしで雇用関係を締結するので、スポットワーカーが期待通りに仕事をしないリスクもあります。

事業主の方はメリット・デメリットをよく考えたうえで、スポットワークを利用するようにしてください。

(塚)