〇 副業の社会保険はどうなる
最近の物価上昇に対応するため、副業を始める人が増えています。その場合、社会保険はどうなるのか、よく調べておく必要があります。
副業には、社員と役員と請負の3つの形態の組み合わせが考えられます。
狭義の社会保険は、正社員や一定の条件を満たしたパート・アルバイトの方が加入する保険で、健康保険、介護保険、厚生年金保険のことです。このうち介護保険は、40歳以上のすべての方が加入する保険です。
広義の社会保険として、他に労災保険と雇用保険がありますが、労災保険は本業と副業の両方の会社で加入し、雇用保険は本業1社だけで加入することになります。
本業の会社で健康保険と厚生年金保険に加入していて、副業の会社で次の条件を満たす場合には、両方の会社で加入(二重加入)して、それぞれ案分した保険料を支払う必要があります。
・週の労働時間が正社員(フルタイム)の3/4以上
・月の労働日数が正社員(フルタイム)の3/4以上
また、所定労働時間が正社員の4分の3未満でも、以下の条件をすべて満たす場合は、二重加入することになります。
・勤務先の従業員(厚生年金保険被保険者)が51人以上
・週の労働時間が20時間以上
・給与が月額88,000円以上(雇用契約上の月額であり、通勤手当や時間外手当は除く)
・2カ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
上記の副業先の労働時間が20時間未満であれば、社会保険に加入する必要がないので、副業先での働き方をどうするか、よく考える必要があります。
社会保険に二重加入する場合、手続きは被保険者本人が行う必要があります。具体的には、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」(以下、「二以上勤務届」という)を、年金事務所(必要があれば該当する保険者)へ提出することになります。
「二以上勤務届」は、勤務先を変更した場合などには、再度届出が必要になります。
二重加入した場合、被保険者本人が選択した事業所を管掌する保険者に資格情報が登録され、健康保険証を利用登録したマイナンバーカード(マイナ保険証)が利用可能になります。
副業する場合、本業の会社が就業規則で副業を禁止していることがあるので、事前によく確認することも大事です。
二重加入した場合の社会保険料は、2つの会社の収入を合算した金額で保険料が計算され、保険料をそれぞれの会社の収入で案分して支払います。(注をご参照)
副業により社会保険に二重加入することで、将来の年金額が増加するなどのメリットがある一方、社会保険料の負担が増えるなどのデメリットもあります。
二重加入になると手続きに時間と労力がかかりますが、2つの職場とよく連携をとりながら進めるようにしてください。ご自身の働き方やライフプランに適した選択肢を見つけ、将来に備えて行動を起こすことが重要です。
(塚)
(注)保険料額の案分計算例
(出所:日本年金機構ホームページ「2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ」より)