〇 育児休業復帰後の給与減少と厚生年金
育児休業から職場復帰するとき、家庭との両立を考えて時短勤務などして、給与が下がる場合があります。その際の厚生年金の取り扱いで、注意したい申請が2つあるのでご説明します。
1つ目は復帰後に給与が下がったら、すぐに保険料も下げる制度です。この手続きは、原則被保険者本人からの申し出を受けて、事業者が対応することになります。
育児休業からの復帰後、給与水準が休業前より下がったら、会社に申請して「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出してもらいましょう。
厚生年金などの保険料は、定時決定といって原則年1回、4~6月の給与を基に、9月からの保険料が決まります。また、随時決定といって年の途中でも、昇給等で固定賃金が大幅に変動した場合、変動月からの3カ月間に支給された標準報酬月額の平均と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたときに、4カ月目から保険料が変更されます。
これに対して育児休業等終了時報酬月額変更は、育児休業終了時に3歳未満の子を養育している被保険者は、育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月間に受けた標準報酬月額の平均に基づいて、4カ月目の標準報酬月額から変更することができます。
この改定は、育児休業前の標準報酬月額との間に1等級以上の差があれば変更できます。また、3カ月間のうち支払基礎日数が17日未満の月は除きます。この変更は、健康保険の保険料にも反映されます。
厚生労働省は、この保険料を下げる制度について「実際の報酬の低下に応じた保険料負担とし、育児をしている被保険者の経済的負担の軽減を図るための措置」(年金局)と言っています。
2つ目は、給与が減っても将来の年金に影響しない制度で、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(以下、「養育期間標準報酬月額特例」という。)といいます。
3歳未満の子を養育する期間中に標準報酬月額が下がった場合、子が生まれた月の前月までの標準報酬月額を使って、将来の年金額を計算します。
例えば、30万円だった標準報酬月額が育児休業終了後の改定で、復帰後4カ月目から15万円に下がったとしても、子が3歳未満の間は30万円とみなされることになります。
養育開始月の前月が被保険者でなくても、その月前1年以内に被保険者であった月があれば、従前の標準報酬月額とみなされます。その月前1年以内に被保険者期間がない場合は、みなし措置は受けられません。
対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月から、養育する子の3歳誕生日のある月の前月までです。
養育期間標準報酬月額特例を受けるには、被保険者が「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を事業主を経由して提出します。なお、申出日よりも前の期間については、申出日の前月までの2年間についてみなし措置が遡って認められます。
上記2つの制度は、会社を通して申請をする必要があるので、忘れずに手続きするようにしてください。
(塚)