〇 年金繰り下げ中に亡くなった、さあどうする(Q&A)
Q:夫が年金の繰り下げ中に亡くなりました。妻である私は,遺族年金をきちんともらえるのでしょうか。また、注意する点がありましたら、教えてください。
A:老齢年金の繰り下げは、本来65歳から受け取る年金を66歳から75歳まで遅らせることで、年金受給額を増額させることができる制度です。
但し、年金受給額が増えることによって、所得税や住民税、国民健康保険料や介護保険料も増えるので気を付けてください。
また、夫が繰り下げをしている期間に妻が死亡して、遺族年金など他の公的年金の受給権が発生した場合は、その時点で増額率が固定され、望んでいた期間よりも繰り下げ期間が短縮されてしまうことにも注意しましょう。
夫が年金の繰り下げ中に亡くなった場合、夫が本来受け取るはずだった年金を、夫の遺族(相続人)であるあなたが未支給年金として受け取ることができます。
但し、繰り下げをしたことによる増額分は受け取れません。あくまでも、亡くなった夫の65歳時点の年金受給額を基に、亡くなるまでの期間に支給されるはずであった年金(未支給年金)を一時金で受け取ることになります。
例えば、夫が65歳からもらえる年金額が200万円とした場合、70歳まで受給を遅らせると284万円(42%増額)の年金を受給できます。
ところが、夫が69歳で亡くなった場合、33.6%増額された年金は受給できず、本来65歳から受給できる年金を4年遅れて、まとめて受給することになります。
つまり、遺族であるあなたに支給される未支給年金は、800万円(200万円✕4年間)になります。
未支給年金には相続税は課税されませんが、受け取るあなたは雑所得として確定申告をする必要があり、所得税と住民税がより多くかかります。
また、遺族厚生年金の支給要件を満たせば、未支給年金(一時金)の他に、夫の老齢厚生年金の4分の3にあたる遺族厚生年金を生涯受け取ることができます。
注意点として、未支給年金を受け取る権利には、5年の時効があります。
例えば、75歳まで繰り下げを選択した夫が74歳で亡くなった場合、遺族であるあなたが受け取れるのは、69歳から74歳までの5年間の増額されていない未支給年金(一時金)です。65歳から69歳までは、時効で受け取ることができません。
最後に、繰り下げ中ではなく、繰り下げ後に受給を始めて、すぐに亡くなった場合には注意が必要です。
例えば、夫が2カ月だけ増額した年金を受け取ってから亡くなる場合です。この場合には、遺族であるあなたは、上記の未支給年金(一時金)を受け取ることができません。(注)
このように、年金の繰り下げ中に亡くなると、いろいろと想定外のことが起こります。妻であるあなたは、慌てずに十分考慮したうえで対応しください。
(注)通常の未支給年金は受け取ることができます。
(塚)