〇 セクハラ被害の申し出があったらどうする
会社でセクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」という)の被害の申し出があったら、あなたはどうしますか。パワハラとは対応が微妙に違うので、注意が必要です。
男女雇用機会均等法11条により、会社はセクハラにより職場環境が悪化しないように、防止措置を講じなければならないとあり、社員からセクハラ被害の申し出があったら、迅速かつ適切に対応する必要があります。
セクハラには主に、性的な言動への拒否を理由に、解雇、降格、減給、異動などの不利益を受ける「対価型セクハラ」と、性的な言動を受けたことで、メンタル不調となり、業務に支障が出る「環境型セクハラ」に分けられます。
では、実際にセクハラ被害の申し出があったら、次の手順で対応してください。
1.被害者と加害者を隔離
セクハラの被害の申し出があったら、まず被害者と加害者を引き離すようにしてください。すぐに隔離できなければ、被害者を調査が終わるまで自宅待機にしてもよいでしょう。
2.セクハラの事実関係を調査
会社がセクハラの事実関係を調査することは、労働契約法5条の安全配慮義務であり、調査しなければ、被害申告を放置したとして、会社に慰謝料の支払いが命じられることもあります。
会社の調査の手順は、次の通りです。
(1)すぐに被害者から事情聴取を行ってください。内容は記録に残し、本人の確認のうえ、署名、捺印をもらってください。被害者が女性の場合、事情聴取の担当を女性にするか、女性社員を同席させるなどの配慮が必要です。
(2)次に加害者側から事情聴取を行ってください。加害者からの事情聴取は、被害者の同意を得たうえで行いましょう。被害者とのメールやLINE等があれば、コピーをとって証拠にしてください。
(3)セクハラは、誰も見ていない場で行われるケースが多いですが、プライバシーに配慮して、関係者、目撃者からも事情聴取を行ってください。
3.セクハラの有無を判断
会社として、セクハラの有無を判断して、被害者と加害者へ伝えてください。判断に迷う場合は、弁護士などの第三者の専門家に相談するのもよいでしょう。
4.報告書を作成
調査報告書には、① 調査を実施した担当者名、② 調査期間と調査方法、③ 被害者と行為者の主張内容、④ 調査によって判明した事実関係、⑤ セクハラの有無に関する事実認定と結論、⑥ 再発防止のための改善点などを記載してください。
5.被害者対応の義務
被害者の対応は、以下のような安全配慮義務があります。① 被害者が心身の被害を回復できるよう配慮する義務、② セクハラによって悪化した被害者の勤務環境を改善する義務、③ 被害者がやっかいもの扱いされ、不利益を受けることがないように配慮する義務
6.加害者に対する処分
男女雇用機会均等法に基づき厚生労働省が定めた指針では、会社がセクハラの加害者に対して、必要な懲戒処分等の措置を行うことを求めています。
会社は就業規則に基づいて、適切な処分を行う必要があります。処分を行う目的としては、① セクハラの被害者や他の従業員が安心して働ける環境を取り戻すこと、② セクハラに対して懲戒処分がされることを明確にし、セクハラの再発を防止する意味があります。
7.再発防止のための措置
セクハラの再発防止のために、① 社長が、朝礼や社員研修の場で、セクハラを二度と起こしてはならないことを訓示、② セクハラ防止のための研修を実施、③ 加害者に懲戒処分をした場合は、懲戒処分を行ったことを社内で公表などの措置を行ってください。
以上のように、セクハラはパワハラ以上に会社側の責任が問われます。会社は、事前にセクハラ防止措置を講じる必要があり、セクハラ被害の申し出があったらすぐに対応できるように、マニュアルなどを準備しておくことも重要です。
<セクハラ対応の流れ>
(出所:厚生労働省HP「職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です」より)
(塚)