年金繰り下げの注意点 PART 1
2022年4月から老齢年金の繰り下げ受給の上限年齢が、70歳から75歳に引き上げられました。75歳まで年金を繰り下げますと、本来の年金額が84%増額されることになります。
(出所:日本年金機構ホームページ「繰下げ受給の上限年齢引上げ」より)
これを見てあなたは、年金が84%も増えるのなら繰り下げするぞ、と思うかもしれません。でも、ちょっと待ってください。安易に繰り下げると、損をするかもしれませんよ。これから「年金繰り下げの注意点」について、2回に分けて解説しますので、よく考えてから決断してください。
1回目の注意点は、年金を受給する夫に年下の扶養の妻がいる場合に、支給される「加給年金」(注1)が年金を繰り下げている間、支給停止になってしまうというお話です。
老齢厚生年金を受給する人に「生活を維持している65歳未満の配偶者」がいる場合、配偶者が65歳になるまで、配偶者の生活費補助として「加給年金」が支給されます。
加給年金の支給額は年間228,700円で、これから年金を受け取る人は特別加算として168,800円支給(注2)され、合計で年間397,500円を受け取ることができます。(2023年4月現在)
例えば、夫が65歳から年金を受給する時に65歳未満の扶養の妻がいれば、老齢厚生年金が年間約40万円増えることになります。そして、年金を繰り下げると、この40万円が受け取れなくなります。妻が5歳年下の場合は、総額約200万円が受け取れないのです。
これは実にもったいない話です。
但し、これは厚生年金の話ですから、国民年金の老齢基礎年金だけを繰り下げて、老齢厚生年金は繰り下げないという選択はOKです。
また、支給額は少ないですが、夫側の年金を繰り下げると、妻側の年金に支給される「振替加算」(注3)も支給停止となります。振替加算とは、加給年金を受給している夫の妻が65歳になって、夫の加給年金が打ち切られたあと、代わりに妻に振替加算という年金が増額される制度のことです。
安易に繰り下げを選択するのではなく、加給年金を念頭に置いてどうするか、しっかり検討してください。
(出所:日本年金機構ホームページ「振替加算」より)
(注1)支給条件の詳細は、日本年金機構のホームページをご参照ください。
加給年金額と振替加算|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
(注2)この特別加算額は、昭和18年4月2日以後に生まれた人の支給額です。
(注3)詳細は、上記日本年金機構のホームページをご参照ください。
(塚)