年金は何年で元が取れるか

少子高齢化が進む昨今、年金財政がひっ迫し、若い方は払った保険料が年金として戻ってくるか心配しています。そして、年金は何年で元が取れるか知りたいと思っています。そこで、2023年度の保険料と年金受給額を基に、元が取れる時期を試算してみました。

まず、国民年金ですが、2023年度の国民年金保険料は月額 16,520円です。国民年金の第1号被保険者である自営業者やその妻(注1)、20歳以上の学生が毎月払うことになります。

自営業者などが、20歳から60歳まで40年間、国民年金保険料を払った場合の総額は次のようになります。

16,520円 × 12カ月 ✕ 40年 = 7,929,600円

一方、65歳から受給する2022年度の老齢基礎年金の満額は、年額 777,792円です。そこで、何年受け取れば元が取れるか計算すると次のようになります。

7,929,600円 ÷ 795,000円 = 9,974… 年

この結果から、75歳までの約10年間受け取ると元が取れることになります。さらに、85歳までの約20年間受け取れば、払った保険料の2倍の年金を受け取れることになります。

10年で元が取れるなんて驚きですよね。これは、国民年金の保険料の半分を国が負担していることも影響しています。皆さん、このことをご存じでしたか。

次に、厚生年金保険ですが、会社員や公務員が加入する厚生年金の場合、就職してから退職するまでの収入が分からないと計算できません。そこで、ここでは賞与なしの年収408万円、標準報酬月額34万円の人が、40年間働いた場合を想定してみます。

標準報酬月額が34万円の人の毎月の支払保険料は、厚生年金保険料額表の折半額から31,110円になります。従って、保険料の総額は次のようになります。

31,110円 × 12カ月 ✕ 40年 = 14,932,800円

40年の勤務のうち、2003年3月以前が20年、2003年4月以後が20年とすると、老齢厚生年金の受給額の計算は次のようになります。

2003年3月以前: 340,000円 × 7.125/1,000 × 240月 = 581,400円
2003年4月以後: 340,000円 × 5.481/1,000 × 240月 = 447,249円

配偶者の加給年金はないとすると、老齢厚生年金は合計の 1,028,649円となり、老齢基礎年金の 795,000円と合わせて、年間 1,823,649円受給できることになります。この受給額で、元が取れる時期を計算すると次のようになります。

14,932,800円 ÷ 1,823,649円 = 8.188… 年

この結果、73歳までの約8年間で元が取れることになります。

さらに、第3号被保険者の妻(注2)がいると、妻の老齢基礎年金 795,000円も受け取れるので、世帯受給額が 2,618,649円となり、元が取れる時期は次のようになります。

14,932,800円 ÷ 2,618,649円 = 5.702… 年

つまり、71歳までの約6年弱で元が取れることになります。

厚生年金保険も保険料の半分を勤務先が負担してくれるので、このように早く元が取れることになるのです。

日本の公的年金は、老後の生活保障のための老齢年金だけでなく、障害になったときの障害年金、死亡に対する保障である遺族年金があり、手厚い制度となっています。

公的年金に対して不信感を持っている人がいますが、以上の解説をご理解いただければ、何とありがたい制度なのか、改めて考え直していただけるかと思います。

 

(注1)本来は「配偶者」が適当ですが、分かりやすくするために「妻」としました。
(注2)第3号被保険者の妻は自分では保険料を払わず、第2号被保険者の夫が払った保険料の中から充当されます。
(注3)厚生年金保険料額表の折半額

 

(塚)