〇 国民年金保険料納付5年延長案とは何か?

2023年10月24日開催の社会保障審議会年金部会では、少子高齢化に伴う年金水準の低下への対応策として、給付財源の確保のため、国民年金の保険料納付期間を現行の40年間(20歳~60歳)から 45年間(20歳~65歳)に、5年延長する案が検討されました。

現在、国民年金の保険料を40年間納付(20歳~60歳の厚生年金の加入期間も含む)すると、65歳から 老齢基礎年金 816,000円(2024年度)を受給することができます。

ただし、受給額としては低いので、厚生年金に加入できない自営業やフリーランスのために
老齢基礎年金を増額したいのですが、給付財源がありません。

そこで、国民年金の保険料納付期間を65歳まで5年延長して、老齢基礎年金を増額しようという案が
出てきたのです。

 

(出所:厚生労働省ホームページの「第8回社会保障審議会年金部会」より)

 

5年延長すると、60歳以降に負担する保険料は約100万円になります。自営業やフリーランスの方には 大きな負担になりますが、60歳以降も働く会社員は、厚生年金の保険料を払うことで国民年金の保険料も負担しているので、追加の保険料は発生しません。

一方、受給する年金額は単純計算すると年間約10万円の増額となり、65歳から85歳まで受け取ると
約200万円増え、老齢基礎年金の受給額が充実したものになります。

また、5年延長により、障害基礎年金や遺族基礎年金の増額にもつながります。

ただし、問題もあります。国民年金の保険料の半分は国庫負担であり、税金で賄われています。
その税金の財源をどうやって確保するのか。増税や保険料の引き上げも検討されるかもしれません。

また、60歳から65歳の間、無職や自営業で収入が少ない方は、どうやって保険料を負担するのかも
大きな問題です。雇用延長が叫ばれていますが、高齢者の雇用はまだ厳しいものがあります。

さらに、年金の繰り上げ受給はどうするか、第3号被保険者の期間も65歳まで延長するかなど、
まだ議論しなければならない課題はあります。

2024年8月現在、国民年金保険料納付5年延長案は、政府内で今回は断念とされています。
しかし、老齢年金の受給が65歳からであり、雇用延長の風潮を考えますと、近い将来また議論されて、いずれ実現されるのではないかと考えています。

(塚)