〇 年金額改定で昭和31年4月1日以前生まれの老齢基礎年金が注意書きされるのはなぜ
令和6年度の年金額が発表され、令和5年度から2.7%引き上げられ、老齢基礎年金の月額の満額が、66,250円から68,000円に増額しました。ところが、注意書に「昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金は、月額67,808円です」とあります。なぜ生年月日によって、年金額に差ができるのでしょうか。(下図 ※1ご参照)
(出所:厚生労働省のホームページの「令和6年度の年金額改定について」より)
年金額の改定には、いろいろなルールがあります。会社等で賃金をもらっていて、年金受給者になった人を新規裁定者と呼び、すでに年金を受給している人を既裁定者と呼びます。
原則、新規裁定者は賃金変動率で、既裁定者は物価変動率で改定します。(下図①②③)
ただし、物価変動率が賃金変動率を上回る場合は、下図⑥のように既裁定者は新規裁定者の賃金変動率に合わせることになります。
(出所:厚生労働省のホームページの「年金制度基礎資料集」34・35頁より、以下同様)
令和5年度の年金額改定は、前年の令和4年度が上図①のように賃金変動率が物価変動率を上回る珍しい状況になったため、令和3年度に65歳になる昭和31年4月2日以後に生まれた新規裁定者(67歳以下)は
賃金変動率を、昭和31年4月1日以前に生まれた既裁定者(68歳以上)は物価変動率を用いて改定しました。
従って、令和5年度の年金額は、新規裁定者は下図から令和4年度より+2.2%の増額改定となり、既裁定者は+1.9%の増額改定になり、両者に差ができました。
ちなみに令和6年度は、前年の令和5年度が上図⑥の状況のため、新規裁定者の賃金変動率に合わせることになり、賃金変動率+3.1%、マクロ経済スライド▲0.4%で、新規裁定者及び既裁定者ともに+2.7%の増額改定になります。ただし、前年の令和5年度の差を引き継ぐため、令和6年度も昭和31年4月1日以前生まれと4月2日以後生まれで、年金額に差ができるのです。
(塚)