残業代請求と時効
ここ数年、未払い残業代請求を代行します!という広告がよく出ています。残業代をさかのぼって請求してくれるようです。
未払いの残業代は、確かにさかのぼって請求する権利はありますが、具体的にいつまでさかのぼれるのでしょうか。
結論として、3年前までさかのぼって請求することができます。
以前は労働基準法での賃金請求権についての消滅時効は2年でしたが、改正により令和2年4月から3年となりました。
[労働基準法115条および143条]
「労働基準法の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は【2年間→3年間】、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」
これは、民法の改正によって短期消滅時効が廃止されたことに伴う「経過措置」とのことで、ゆくゆくは5年に再度改正されるようです。
ここで注意したいのは、3年の時効が適用されるようになったのはあくまで令和2年4月以降に支払われるべきだった分についてですので、例えば令和3年10月からめいっぱい過去分を請求しようとしても3年分はさかのぼれません。
例:令和3年10月26日に令和3年10月25日支給分からさかのぼって請求する場合
⇒令和3年10月25日支給分から令和元年11月25日支給分までの2年分
つまり、まるまる3年分さかのぼって請求することができるのは、改正のあった令和2年4月から3年経った「令和5年3月以降」になります。なお、時効の起算日はその対象となる賃金支払日の翌日からです。たとえば、令和3年10月25日支給分については、令和3年10月26日から3年の間に請求しなければ権利がなくなる、ということになります。
(大)